この作品は短編Destroyed Timesの続編です。先にそちらを見ておくことをお勧めします






冬、俺は色々な奇跡に出会った。


そこで、さまざまな人達と出会い


さまざまな感情を共有し


そして絆を深めあった


しかしあることがあり、俺は故郷に戻ってきた。


その故郷は俺を何事もなく俺を迎えてくれた。まるで母親がわが子を優しく包み込むように……








Revival Times  〜再会〜











「っと。やっぱり何も変わってないな」
駅前の光景は、何も変わってはいなかった。細部では細かく変わってはいるだろう。でも雰囲気は変わらない。
それら全てが懐かしく感じられる。それだけあそこでの生活が辛かった。そう思うほど、彼はあの町での日常に疲れていた。現在は粉々に砕いたはずの。

「――まぁ、四ヶ月と少ししか離れてなかったし、そんなに劇的に変わるわけないか」
彼は、脇に抱えていた鞄をベンチに置く。

あの街、雪音市を出るときに持っていた荷物はこれだけだった。他の荷物は秋子さんに頼んであった。
彼が最後の挨拶をしたとき秋子さんは本当に申し訳なさそうに涙を流しながらに祐一に謝ってきた。

その光景が祐一の頭の中でフラッシュバックし少しの間佇んでいた。

「とにかく、ひとまずは商店街にいくか。夕食買ってこないとな」

ベンチから鞄を取り彼は久しぶりの故郷を楽しみながら商店街に向かって足を向ける。少し浮き足立ちながら。










その彼の姿に気がついた少年が一人。

「ん? ……あいつは! っとこうなるとこんな事やってる場合じゃないぜ!」
一人の少年がコンビニの中から飛び出してくる。どこかに向かいながら喜びの声を上げる

「祐一が帰って来やがったっ!! 楽しくなるぞっ!!」

その表情は本当に嬉しそうであった。






「やっぱり、変わってないな〜うん。安心したぜ」
祐一は久しぶりの商店街をゆっくりと歩きながら楽しんでいた。
何せ向こうでは商店街と言ったら、集られ、脅され、奢らされる場所であったからだろう。

「っと、やめやめ。ここでは向こうの事はもうどうでもいいんだ」
ふと向こうのいやなことを思い出し、頭を振りながら忘れようとする。だが一度意識したものはなかなか止まらない。

「おっと……ここは」
祐一は何かに気がつく。
其処はどこの商店街にでもある裏道。だけどここのはちょっと違う。

「久しぶりに行ってみるか!」
祐一は夕飯の材料を買うことをいったん後回しにし知り合いに会いに行く事を選択したようだ。
それにより意識は向こうの思い出からこちらの事に照準を向ける。

店の前に行き馴染みの扉を押す。カランと扉にくくりつけてあるベルが音を立てる。
彼は懐かしくなって、入る瞬間こう言わずにいられなかった。


「マスター。久しぶり!」















「……へぇ〜祐一君、向こうでそんなことがあったのかい? 大変だったね」
「ええ、本当に大変でしたよ」

俺はコーヒーに口をつけながら答える。
ここは俺がここにいるときに贔屓にしていた喫茶店だ。
俺が中学生のときに発見しそれからはこっちの友人達と一緒によく来ていた店である。
そんなこんなで俺がここを離れる前まで週に一回は顔を出していたのですっかり常連となりマスターと仲が良くなっていた。

「ところで祐一君。皆にはもう会ったのかい?」
マスターはコップを拭きながら言ってくる。現在客は俺一人だからこういった会話も出来るんだろう。
「いいえ、未だですよ。先ほど帰ってきたばかりですし、先に商店街によってきたので」
其処まで言うと俺はまたコーヒーを口にする。

(ん……うまい。秋子さんの入れたコーヒーも上手かったがやはりここのコーヒーが最高だな)

馴染みの店で飲んでいるからそう思うのかもしれないがやはりここのコーヒーが一番だと思う。

「そうかい。早く皆に顔を見せてあげに行きなさい。皆寂しがっていたよ」
「あはは……そうですか」
そういう俺の脳裏には馬鹿な事を一緒にやって常につるんでいた親友の顔が頭に浮かぶ。
あいつ、元気かな……聞くまでもなさそうだが。


「それじゃあ、今から行きますよ。ご馳走様でした」
「はい、どうも。今日は祐一君のお帰り記念で無料にしておくよ」
「いえ、払いますよ」
「いいんだよ。これからも、うちを贔屓にしてくれれば……ね」

この人には勝てないな……俺はそう思いながら
「ありがとうございます、もちろんこんな事抜きでもこれからも来ますよ」

と返事をして喫茶店「名も無き片隅の小屋」を出た。




「っと、もうこんな時間か」
既に日は傾きそろそろ日没かと言うところだった。入る前まではまだ日は傾いていなかったから小一時間は話していただろう。

「とにかく買い物をして帰ろう、あいつらに会うのは明日にしてもいいだろうし」
そう言って祐一は商店街の中に消えていった。

































「ふぅ……ようやく着いたな。愛しの我が家に」
両手には衣類の入った鞄、スーパーの袋と些か妙な格好で彼は四ヶ月ぶりの我が家に帰ってきた。
あれから既に日は落ち周囲は暗くなり始めていた。

「よし、家に入ろうか」
そう言って家の鍵を取り出し、鍵を開ける。



がちゃっ…





ばたん!




ちなみに最初のがドアを開けた音であり、次のがドアを閉めた音である。




「何で浩平がいるんじゃあ!!!!」

近所の事も考えずに大絶叫。

「何を言う祐一!! 俺だけじゃないぞ」

ドアを思いっきり開けて出てきたのは折原浩平
家の中には祐一の親友である浩平が堂々と仁王立ちで待ち構えていた。

「何でお前……はどうでもいい!! どうやって入った!!」

動揺のためか、手に持っていた鞄やスーパーの袋を地面に落とした。

「いやぁ、お前の叔母さんに電話したら一発で了承だったぜ。あ、ちなみに鍵はピッキングで開けたからな」
そういいながら、ポケットから道具を取り出す浩平。良くも悪くも彼は常識を大幅に超えれるらしい。祐一はこんな親友の話に呆れ半分楽しさ半分で聞いていた

「お兄ちゃん!? 鍵を預かっているって言ってたじゃない!! また嘘ついたのね!!」
リビングから出てきたのは顔立ちが整った少女、どこか浩平に似たような顔の少女の名は「折原みさお」
折原浩平の妹である。やはりこういった兄を持つとしっかりした子に育つらしい。そんなことを祐一はぼんやりと思っていた。

彼の眼前では兄妹がてんやわんやの口喧嘩を繰り広げていた。

「まぁ待てみさお。いま祐一が帰ってきた」
そうして急に一人置いてけぼりだった祐一に白羽の矢が立つ。普段ならこんな見え透いたごまかしなど効かないだろうが今回は違った。


「みさお、ただいま」
祐一は笑いながら、みさおの頭を撫でる。その瞬間みさおが祐一に飛びついてきた。

支えきれず、倒れこむ祐一。ちょうどみさおが祐一を押し倒すような格好で倒れこんだ

ゆっくりと顔を上げたみさおの目は赤かった。
「祐兄……お帰りなさい」
そうして顔を伏せ彼の胸の上に顔を乗せた。
泣いているのか、その声は震えていた。
彼はそっと、その震えている細い身体を抱きしめながら、もう一度少女に言う。

「ああ……ただいま。みさお」
そのまま、彼は抱きしめている腕の力を少し込め、しっかりと抱きしめた






「……あのぁ、僕置いてけぼりですか」
その片隅では、浩平が一人空を見上げながら呟いていた。いくら彼でも再会の邪魔はしないらしい。
















「えっと――ごめんね祐兄。急に抱きついたりして……」
五分ほど立って泣き止んだみさおを泣き止むまで抱いていた祐一は少し気恥ずかしさを感じながらも
「まぁ、気にするな。確かにびっくりしたけどな」

服についた泥をはたきながらそう答えた。
ちなみに浩平は既にリビングに戻っていた。妹の邪魔をしたくなかったのかそれとも放置を喰らったからかどちらかは分からないが。恐らく後者の線が濃いだろう。

「もしかして、皆集まったのか?」
祐一は靴を脱ぎながら、そうみさおに問いかけた。その表情は笑顔。
「ん〜、見てからのお楽しみ♪」
同じように笑顔で秘密にされた。先ほどまで泣いていた様子など既に微塵にも無い


「とにかく、リビングに行こう祐兄さん」

「おう、行こうか」

服装を整えリビングに通じるドアを開く祐一。

そのドアの向こうには




「お帰りなさい、祐一」


こちらでの


「久しぶりですね、祐」


彼の大切な


「久しぶり、祐一!」


心を許せる


「久しぶり、祐一くん」


そんな存在


『お帰りなさいなの、祐一さん』


この街での


「みゅ〜、お帰り」


彼の生活が


「おかえりっ! 相沢君」


また始まる


「久しぶりね、相沢君」


それに彼は笑顔で答えた





「皆――久しぶり」


心の一部で桜の事を思いながら……




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