Revival Times #2







目覚まし時計が派手な音を立てて鳴る。
布団から出た手が鬱陶しそうにそれを止める。
次に出てきたのは頭、次に上半身。

「……ふぁ。すっげ〜眠い……」
続いて大きい欠伸。
言葉の通り、目がまだ殆ど開いていない。祐一は朝は大して強くも無い。はっきり分けると弱いほうに入るほうだ。
水瀬の家にいたときは、あの万年寝花子の名雪が居た為に朝が強いような格好になっていた。

「――とりあえず服、着替えて飯食って……」
半開きの目のままベットから出る。
ふらふらしながら、クローゼットから制服を引っ張り出し着る。
多少、身体を動かしたからか目は半開きから七割、開いた。
水瀬の家を出た事によって、どうやら朝は強いと言うかどうやら少々弱いらしいことが完璧に判明した。
そんな彼があちらでは毎日、ばっちり目を覚ましていたことからかなり無理して起きていたようだ。
やはり、水瀬の家では苦労していたようである。

「次は……飯か」
のろのろと着替えに時間をかけた後、一階に降りる。
机の上に置いてあった食パンをトースターにかける、その間にインスタントコーヒーを作る。
朝に弱いため、祐一はコーヒーを朝に飲むことが習慣になっていた。無論水瀬の家でもこうだった。
尤も、向こうでは朝の連続マラソンがあったためコーヒーが無くても目が覚まされていた、その事を思い出し祐一は未だ眠気の残る顔に苦笑を作った。
焼きあがったパンとコーヒーで朝食を取る。
少々少ない気もするが、祐一にはこれぐらいがちょうど良い量だった。
(静かなリビングで食べる朝食もまた、良いものだな……)
コーヒーを飲みながら、祐一はそんなことを考えていた。

























「やっぱりさ、ゆっくり歩いて学校に行けるのが普通だよな」
既に学校の校門の前に立っている祐一がぽつりと呟く。
「ええ、そうですよ」
その呟きに答える透き通った声。

「ああ、全くだ……?」
帰ってくるはずの無い答えに反射的に答えながらも、祐一はその声が聞こえた方に向く。

「やっぱり、朝はのんびりしながらこないとね〜、身体が変になっちゃいます」
祐一に声を掛けた少女は自分で言ったことに自分で頷きながら力説していた。首を振るから長い髪が揺れる。
「……お前は誰だ?」
内心、彼女の意見に賛同しながら祐一は違う言葉を言う。
「むぅ、人に名前を聞くときはまず自分の名前を言いなさいって習いませんでした?」
頬を膨らせながら祐一の名前を聞いてくる少女、そんな少女の行動を子供っぽいと思いながらも律儀に答えてやることにした。
「ああ、すまん。俺は相沢祐一。今日ここに転校してきたん……ふぁ」
最後のほうに欠伸をかみ殺しながらの自己紹介となった。まだ眠いようだ。

「むぅ……欠伸をかみ殺しながらの自己紹介なんて初めてだよ……ま、いっか。それじゃあ次は私の番。私は斉藤冬遊」
「珍しいな、ふゆというのは。やっぱりあの季節の冬って書くのか?」
祐一はゆっくりと歩みはじめる、それにあわせて冬遊と名乗った少女もそれに続く。
「違うよ、冬も入るけどその後に遊ぶって言葉も入るんだ」
「となると、冬と遊ぶで冬遊か。むぅ……世の中は広いな、珍しい」
頷きながら、言う。
「面白い名前でしょ?」
足元を見ながら冬遊は呟く。祐一に聞こえる程度の大きさで。

「そうか? 面白い以上に興味深い名前じゃないか。俺は好きだなその名前」
何の気なしに祐一は思ったことを言う、その言葉を聞いた冬遊は下を向いていた顔を上げる。
「そっか、ありがとうね」
「どういたしまして」
そんな会話をしていると昇降口に着いた。
「俺は職員室に行くから、じゃあな斉藤」
「あ、うん。じゃあね相沢君」
別れの挨拶をし、階段を上ろうとする祐一。
「あ、相沢君!」
冬遊に後ろから声を掛けられ上るのを中断する。
「なんだ? 斉藤」

「一緒のクラスになれたらいいね」
笑顔で言い、そのままクラスに向かって歩いていった。
(……変な奴だな)
心でそう思いながらも、不快な感じはせず祐一は職員室に向かって歩いていった。
(でも、悪そうな奴じゃあなかったな)
朝に、校門でであった斉藤冬遊と名乗った少女の事を考えながら。











「どうも、お久しぶりです。萩野先生」
「おお、相沢か。久しぶりだな。元気だったか?」
職員室についてから、前にこの学校にいたときの知り合いの先生を見つけて祐一は挨拶をする。
「ええ。それで、俺のクラスはどこでしょうか?」
既に時間はホームルームが始まろうとする時間であり、先生は職員室に集まっていた。
「ああ、ちょうど私のクラスだ」
「本当ですか? それならよろしくお願いします」
軽く頭を下げる。
「さて、じゃあ行くか相沢」
「はい、分かりました」
鞄を手に取り、萩野と呼んだ先生の後ろについて行く。
そろそろ始業のチャイムの鳴りそうな時間帯にグラウンドを走りながら学校に駆け込んでくる生徒を見ながら、ついて行く。

何かが起こりそうな予感を、胸に秘めて。




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