Revival Times #3
「あー、席に着け〜」
その一言で皆は席に着き始める。どの学校でも変わらない光景だ。
「では、今日は転校生を紹介する」
その言葉を聞いて冬遊は胸を高鳴らせた。
(あの人かな……)
もし彼なら、嬉しかった。もっと話をしてみたいと思っていたから。
「では、入ってきなさい」
担任である萩野先生が廊下に居る転校生に声を掛ける。
冬遊は、その開いていく扉をじっと凝視した。そこから入ってきた人は――
「……ん? 入ってこないのかね」
担任は中々入ってこない転校生の様子を見に廊下に出た。その入れ違いに後ろのドアが開き少年が入ってくる。
朝の人だ、反射的に冬遊はそう思った。
同じクラスになれた、それだけで嬉しかった。もっと話せるそう思った。
テクテクとクラスの中を前に向かって歩いていく、その中に朝見た顔があることに祐一は気がついた。
同じクラスになったのか、と祐一は思った。偶然とは怖いなとも続けて思った。
そして教卓の横に立つ。何食わぬ顔で。
「ったく、どこに行ったんだ」
廊下から担任の教師が入ってくる、そこに祐一の姿を見つけると。
「そういえば、お前はそういった奴だったな。まあいいが早く自己紹介しなさい」
呆れたような表情で扉に身を寄せる担任。
「…っと、俺は相沢祐一です。ついこの間までこの学校にいたので俺の事を知っている人もいるかもしれませんがよろしくお願いします」
言い終わった後で、祐一は苦い表情をする。
(しまった……ここはお決まりのネタをするべきだったな)
この少年は既に浩平じみてきているようだ。
祐一が教壇から降りると入れ違いに担任が教卓に上がる。
「というわけだ、つい半年くらい前まで相沢はこの学校にいたから知っている奴もいるだろうが知らない奴は仲良くしてやってくれ。ちなみに一時間目は相沢の質問会にするからな、じゃあ」
一気に連絡事項を告げそそくさと教室から出て行く。
どうやら朝の祐一の態度が気に障ったらしい、ちゃっかり一時間目に祐一の質問会などにしていた。
その言葉を聞いていた祐一は。
「……俺の座る席を言ってないぞ」
どうやら担任は言い忘れていたらしい。
「相沢君、私の隣空いているけど?」
「ん――ああ、斉藤か。ありがたく座らせてもらうよ」
祐一に声を掛けてきたのは、冬遊だった。
「ちなみに一時間目は数学だから、質問会なんて出来ないんですよね〜。全く萩野先生は何を考えているのか――」
振り返って日課表を確認する。確かに今日の一時間目は数学になっていた。
(あの先生は確か現代文の担当だったな)
祐一は過去の記憶から情報を引き出し、照らし合わせる。
「確かに無理だな、うん質問会なんてやらなくて助かった」
「ですよね、私もやりたくないよ」
「いや、俺はやるぞ!」
「だよな〜。俺はそんなに人前で目立ちたくは無いしな」
先ほど、人前でお決まりのネタをしようとした人間が言う言葉とは思えない。
「うんうん。私も〜」
「祐一、俺と共に世界を目指さないかっ!」
「人前に出たらどうしても視線が気になるんだ」
「うん、気になるよね〜。あと静かだったらさらに気になるよね」
「そうそう、それだ! 静かな状態で一人だけ話すっていう状態がいやなんだよ」
「……無視ですか」
「――そろそろ聞いてあげてもいいんじゃないのかな相沢君」
「そうだな、向こうむいていじけてるしな」
机に手をかけて、反省のポーズをしている浩平に祐一は声を掛ける。
「おい、どうした浩平」
「ようやく反応してくれたか、マイフレンド! 俺と一緒に――」
き〜んこ〜んか〜んこ〜〜〜ん
とっても素敵にジャストなタイミングでチャイムが鳴った。
「……折原死すとも世界は死せず〜〜!!」
変な格言を残して去っていった。
「一体奴は何が言いたかったんだ……」
「さあ……でも折原君ですから」
それを見ていた二人はまあ何時ものように、「浩平(折原くん)だから」、といったもので納得していた。
「と言うより浩平の奴同じクラスだったんだな」
「そですよ、相沢君は折原君とは知り合いなんですか? 仲がよさそうに見えたのですけれど」
「まあね。奴とは長い付き合いだな。一応幼馴染になるんだろう」
浩平のほうに視線をむけると瑞佳に慰めてもらっていた。
(むぅ……あの二人と同じクラスか)
何か釈然としないものを感じながら祐一が眺めていると。
「相沢君相沢君、先生が来ましたけれど教科書は貰ってますか?」
「……げっ」
祐一は慌てて机の中を漁り始めるが入っているわけも無い。
「貰ってないな……仕方が無い。今日は話を聞いておくだけにするか」
「私のを見せてあげますよ」
そう言って机を引っ付ける冬遊、祐一は。
「そうか、ありがとうな斉藤」
「いえいえ、どういたしまして」
そうして、授業が始まった。
後書き
っと、今回はちょっと短いですね(汗
次回からはもう少し長く書きたいですね〜。でわっ!
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