Revival Times #5





 青空が綺麗に、アスファルトに撒かれた水溜りに写る。
 そんな晴れた日。

 「なあ、祐一……」
 「何だ浩平」
 朝の教室、教室の中は登校してくる生徒達で賑わっていた。
 そんな中珍しく、祐一と浩平が遅刻ギリギリでない時間帯に教室にいた。普段遅刻ギリギリなのは浩平のせいではあるのだが。

 さらに珍しいのは普段の浩平からは考えられない、深刻な態度で彼は祐一に話しかけている。
 「俺、悩みがあるんだ」
 「そうか……何なら聞いてやるよ」
 身体を浩平のほうに向ける。
 「ありがとうな、祐一。俺、ずっとずっと考えていたんだ」
 「その事を考えていると、胸が苦しくなっていたたまれないんだ……」
 「なぁ、祐一。俺にその答えを教えてくれよ……」
 その浩平の真剣の態度に祐一も真剣に耳を傾けた。








 「……パンダって、黒地に白なのか? それとも白地に黒なのか? 教えてくれっ!」
 「そんなことかよ、まじめに聞いていて損したぜ!」
 「そんなこととはなんだ! 俺がすげー悩んでいるんだぞ、まるで考える人のようになっ!」
 聞いているほうなのに堂々と胸を張り、少し偉そうな浩平。
 「……たぶん白地に黒じゃないか」
 呆れ半分、面白半分で答えを返す祐一。

 「むぅ、やっぱり白地に黒なのか……いやそんなことはない。きっと黒地に白といってくれる奴がいるはずだ!」
 「お前……まさか朝からそれを聞くためだけに早く起きたのか?」
 「当たり前だ! マジで昨日から気になって眠れなかったんだ。ちなみに家にあった動物百科事典にもパンダがどっちの色が下地なのか書いてなかったんだ……」
 がっくりと、肩を落とす浩平。
 どうやら祐一よりも浩平のほうが余計な事に力を注ぐタイプらしい。
 「それやっぱり結構くだらない悩みな」
 「いや、俺には勉強しなかったテストの結果くらい気になることなんだ!」
 確かに少し気になる。


 「くっそ! こうなったらクラス全員に聞いてやる」
 そういいながら一番近くにいた男子生徒を捕まえ、本当に聞き始めた。
 それを横目で見ながら、祐一は席に座る。
 鞄から必要なものを取り出す。
 そうしてチャイムが鳴りHRが始まるとぼんやりと遠くのほうを見ていた。










 祐一が浩平に阿呆な相談を受けているとき、彼、北川潤は学校に登校する途中であった。
 つい数ヶ月前まであった雪はとっくに溶け今はアスファルトがその道を覆っている。
 潤の周りには同じ服を着た人間が一定の方向に向かって歩いていた。
 それはそうだ。今は登校時間であり、なおかつ比較的人が多い時間帯というのもある。
 それぞれ一人で登校する生徒や、友人を見つけたのか走ってその人に駆け寄る生徒、何人かで連れ添って登校する生徒がいる。中にはカップルと思しき生徒もいた。
 その中に、それぞれ美少女といっても過言ではない女生徒達が潤の前を歩いている。

 彼女達はついこの間、祐一と潤が言い争った相手でもある。
 結局話し合いは平行線をたどり、決着はつかなかった。こうして祐一はそれを期に、この街から出て行ったのである。

 祐一が出て行った後、表面上では彼女達は落ち着いたように見えた。
 それでも時々、洩れて聞こえてくる彼女達の話の内容は彼のことであった。
 その洩れてくる話を潤が聞く限り、彼女達は未だ一方的に祐一が悪いと決め込んでいるようであった。
 その話を聞くたびに潤はいたたまれない気持ちになる。
 あそこまで自分の親友が本心から物を言ったのに彼女達はそのことに気がつかず、自分たちのことしか考えていない。
 歩きながら視線を上に上げる。

 雲ひとつない青空。
 この空は祐一がいる街までつながっているんだな、と彼は思った。

 「上を見ながら歩くとつまずくぞ、潤」
 「そんなに鈍くはないさ、お前こそつまずくなよ忍」
 潤に声を掛けてきたのは久瀬だった。
 彼も、祐一が街を出て行ったときに見送った数少ない祐一の心情を知る人物でもあった。
 「それで、空を見ながら何を考えていたんだ……テストのことか?」
 「アホ、今回も大丈夫だ。俺が真ん中から落ちた事がないのは知っているだろ」
 「まぁ確かに常に真ん中のみをキープしている君には不要な言葉だったな」
 忍は眼鏡のフレームを人差し指でクイッと上げた。
 そんな行動がいちいち型にはまっていて、良いところのお坊ちゃんといった印象を受ける。

 「それで、何を考えていたんだ?」
 「祐一の事さ……まぁ、ちょっとな」
 「そうか……ついこの間までは彼もここにいたんだな」
 昔を懐かしむ老人のように、遠くを見ながら忍は呟く。

 「よし! 今度の連休に一発逢いに言ってみるか、もちろん行くよな忍」
 「全く……潤はいつも強引だな。まぁ付き合ってやるか」
 そういう忍の表情も呆れた顔ではない。
 むしろ悪戯を考えた、少年のような表情をしていた。
 「さて、そうと決まれば色々計画を練ろうぜ。登校しながら」
 青空の下、彼等は離れたところに住んでいる親友のところに向かう計画を話し合いながら歩いていった。
 そんな晴れた日の出来事。











 「祐一! やっぱりパンダは黒地に白だ!」
 「お前……まだ聴いていたのな」
 昼飯をつつきながら祐一は呆れたのか諦めたのか、よく分からない溜息をつきながら親友の答えを聞いていた。



後書き


 ああ、何を書いているんでしょう私(苦笑
 ギャグなのかシリアスなのか中途半端になってしまいました、しかも使い古されたネタです(汗
 ちなみに冬雪はパンダが白地に黒なのか黒地に白なのか知りません。お知りの方は冬雪に教えてやってください(苦笑
 しかしパンダのことはぜひ知りたいですね〜、今度本格的に調べてみましょう。
 でわでわ〜



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