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BK幕間 『フジの花サキ、そのハルカ遠くへ』

第3話




「そうだけど、アンタは?」


「申し遅れました、わたくしは藤咲遙と申します」


「はぁ、まぁ……」


と、祐一は微妙な反応を見せた。


(ねぇ、佐祐理先輩この藤咲とか言う人の気配感じました?)


(いえ。風が吹いて声を掛けるまでは全く気付きませんでした)


「で、……何か用?」


祐一はイマイチ状況が分からないといった表情で訊ねた。


「相沢祐李さんと水瀬秋子さんの依頼で呼ばれたのですが……」


「ってことはアンタが……医者?」


祐一が疑問形になったのはその容姿が理由だ。


医者と言うにはやけに若い、というよりは若すぎる。


「医者……と言うよりは正確には助手なんですけど、まぁ私に見れる傷なら私が見ていいと言われてますので」


「だ、大丈夫なのこんなので」


あやめが心配そうに言うが、あまりにそれは失礼だった。


だが、それを遙は気にした様子を微塵にも見せなかった。


「っと、祐李さんと天王寺さんがみえましたね」


「え?」


遙がそう言うと本当に祐李と戒がやってきた。


いくら天王寺家とはいえ、6人が一堂に集まっている様子は異様だった。


「まったく、行動が早すぎるわよ遙ちゃん」


「まったくだ、俺たちを置いていったら話がすすまんだろが」


「申し訳ありません」


遙は特に言い訳することもなく、ただ謝った。


そう言われると逆に申し訳なくなってしまうのが人情だった。


「いや、別にいいんだけどよ」


バツが悪そうに戒が頭をかきながらそう言った。


「母さん知り合いなのか?」


「いや、うーん……この子の先生って言うかお師匠様と知り合いなのよ」


「で、なんで藤咲さんだけがここに来てるんですか?」


そのお師匠様はどうした、と言いたげにあやめは言った。


「んー、てっきり聖が来るんだと思ってたからなぁ、いいお酒用意してたんだけど……」


「いやだからそういうことじゃねぇだろ」


「なにぶん先生もこの時期はご多忙でして……。なので私が行って見てこいと申し承ったのです」


「ふむ…………」


そういわれると、これ以上の言及は雰囲気的に無理だった。


そして祐李が仕切りなおすようにこういった。


「ま、もうすぐ秋子が来るだろうしそれまで待ちましょう」























「これは、酷いですね……」


秋子が来るまでの待ち時間、遙が祐一の傷の具合を見たいというので場所を天王寺家内に移していた。


そしてその手さばきを見るとその場にいた全員が彼女の腕を認めざるを得なかった。


「一体何をしたらこんな風になるのですか?」


遙が真面目な表情で聞くので祐一はついついたじろいでしまっていた。


「いや、なんて言うか……」


「自分の攻撃で自分の腕まで砕いちゃったのよソイツ」


あやめが冗談めかしてそう言うが遙は至ってまじめな表情を崩さなかった。


「それ、本当ですか?」


「え、うん、そうだけど?」


あやめはそう言いながら祐一の方を向いて同意を求めた。


「まぁ、そうだな……」


「…………」


祐一のそれを聞くと今度は何も言わず、再び祐一に傷ついた左腕を眺め始めた。


「あ、秋子が来たわね」


それから数分後、祐李が唐突に呟いた。


「まさか、気配なんて何も感じませんよ?」


あやめがそう言う。


「まぁ、まだ道場の門付近だから。佐祐理ちゃん迎えに行ってくれる?」


「……はいな」


と、妙な返事をして佐祐理は席を立った。


そしてそれから数分後。


「祐李さんってエスパーですか?」


そういうセリフを言う、佐祐理の姿があった。

























「相変わらずですね、姉さん」


秋子が到着し、今までの経緯を話すと秋子がそう言った。


「もはやそういう人ってレベルじゃないと思うんですが」


「まぁ、女の勘って言うか?」


祐李は少し気取ったポーズを見せた。


「女の勘が女に、しかも実の妹に働いてどうすんだよ」


「私は実の妹でも……」


「それ以上は茶の間の毒だから吐かないで下さいね、姉さん」


「うぃ。まぁ冗談はこの辺にしてどーすんのよ秋子」


「そうですね、聖さんが忙しいって話は聞いてたんでこういう状況は一応予想の範囲内なんですが……」


「なんですが?」


「遙さん、祐一さんの傷の診断はどうなんですか?」


秋子は遙の方を向いてそう言った。


「残念ですが、私の腕ではこの傷は治せません」


静かに遙はそう言った。


「……おいおい、なら俺の腕はどーなるんだ?」


「遙さん正直な意見でお願いします、もし貴女が祐一さんの腕を診た場合治せる確率は?」


「……私の場合だとせいぜい3割弱です」


「なんだ、充分勝算あるじゃないか。それでいいから診てくれないのか?」


「貴方正気ですか?」


「つってもそれしか手段がないわけだろ? だったらそれでいくしかないじゃないか」


「ねぇ、聖が診た場合はどうなの? 予想でいいからさ教えてくれない?」


と訊ねたのは祐李。


「先生なら……恐らく確実に治せると思います。確率が100%と言うわけじゃないですがそれを治す人ですから」


「…………」


遙のその言葉に秋子は手を顎に当て考えるような仕草を見せた。


「…………祐一さん」


「はい?」


「祐一さんには”オネ・エア連合国”に行ってもらいます」


「い、意義ありっ!」



























「で、なんでこうなってるわけ?」


再び場所を外に移し、格好を戦闘用に変えたあやめが呟いた。


確かに異議を唱えたのは自分だが、それがどうしてこういう現状を生んでいるのかイマイチ理解出来ないでいた。


「ねぇ、祐一なんでこんな状況になってるのあたし」


「いやなんでって……お前が異議を唱えたからじゃないのか?」


「だからなんで異議を唱えたらこういう状況になんのよ?」


「さぁ……と言いたいところだが、母さんのせいだろ」


「そう、やっぱりね」


「「……はぁ」」


そして二人してため息を吐いた。


「あの藤咲さんって人どうなのかしら……」


今度は一転、少しはなれたところに祐李や秋子と共にいる遙のほうを向いた。


彼女は元々持ち合わせていた服がないのかそのままの格好で何やら祐李、そして秋子と話をしていた。


「さぁなぁ……これは俺の勘だけどさ、結構やると思うぞ」


「……アンタまで勘とか言い出さないでよ」


「まぁ、用心しておいて損はないと思うね」


「はぁ、ほんとにどうしてこんなことになってるのかしら」





















話はほんの十数分前だ。


あやめの異議に対し、言葉を返したのは祐李だった。


「なら、勝負で決めないと」


何が、ならなのかさっぱりその場にいた人間には分からなかった。


「はぁ……? 誰が誰と勝負するんですか? て言うか何故?」


当然その疑問を持ち出したのはあやめだった。


「誰と誰ってあやめちゃんと遙ちゃんに決まってるじゃない。理由は、あやめちゃの為? あいや、祐一をどうするか決めるためね」


「人の行方の末を他人に決めさせるのかよ」


「だってアンタ怪我人じゃん。ま、こういうときは決闘ってのがセオリーなのよ」


「あの、私……戦闘要員じゃないんですが」


「ダイジョブ、ダイジョブ。この私に任せてちょーだいな」


「は、はぁ……」


「また、女の勘ですか姉さん?」


「まぁね、そんなところよ」


「そいじゃあ、場所を移しましょうか。さすがにここじゃ無理だしね」


「あの、ちょ、ちょっと……あたしの意見は?」
























「強引よね、祐李さんも」


「まぁな。ああいう人だ」


準備運動をしながらあやめは再びため息をついた。


すると、向こう側に行っていた佐祐理が祐一たちの方へやってきた。


「どうだ、佐祐理さん? あの人結構出来そう?」


率直な疑問を祐一がぶつけた。


「そうですね……そこまで戦闘に身を置いているわけじゃないそうですけど、それでも武術を齧ってるそうです」


「なるほどね」


「こりゃ、手加減なんて必要なさそうね」


「むしろ本気でやった方がいいと思いますよあやめさん」


「どしてですか?」


「あの人、多分あやめさんの苦手なタイプです」


「苦手なタイプ……? あたし好き嫌いないと思ってたんだけど」


あやめがはてな、と首をかしげていると向こう側から声を掛けられた。


「そろそろ始めるわよ」


その言葉を聴いてあやめは首をかしげながらも歩いていった。


「佐祐理さんもしかして母さんと秋子さんは……」


「恐らくそうだと思います」


















「えーっとルールは取り立てて変わらないわ。ただ場外がないから場外負けはなし」


「要するにテンカウント負けするか、ギブアップで勝敗が決まるってことですよね」


「そういうことよ。ああ、それとね……」


「?」


「遙ちゃんは戦闘要員じゃないから特別に武器ありってことで」


「え、武器?」


微かにほくそ笑む祐李の顔があやめには見えていなかった。