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護衛獣は守護者 後編







「いくぞディエルゴ――――断罪の覚悟は充分か」



目の前に広がるのは夢で見た剣の丘。

美しくも悲しいこの世界で・・・たった一人の英雄が悠々と立ち誇っていた。










護衛獣は守護者
後編











季節は巡る。

今思えば、本当にいろんなことがあった。

帝国軍の隊長であるアズリアとの戦闘。

イスラとの出会い・・・裏切り・・・

無色の派閥との抗争・・・そして・・・

シャルトスとキルスレス・・・

私ですら解析できなかった二振りの魔剣。

それをめぐる戦いが・・・この小さい島で行なわれた。

決して長い刻とは言えぬ時間を・・・私はとても長く感じた。

しかし、この戦いも決して無駄ではなかった。

アティ・・・

私のマスターであり、かつての自分と重ねてしまうほどの愚か者だった人。

彼女の持つシャルトスは、イスラが持つキルスレスによって破壊された。

剣を破壊されたアティはまさに死人のような状態だった。

しかし、それを支えたのは私ではなく、彼女の教え子であるアリーゼとベルフラウだった。

そして彼女は再び立ち上がり、無色の頭首たるオルドレイクを倒した。

残すはキルスレスを持つイスラだった。しかし、立ち直った彼女の猛攻で倒され・・・

呪病が動き始めた・・・が、それは私が投影したルールブレイカーで何とかした。

残るはこの遺跡にいるディエルゴ・・・エルゴに反する者。

奴を倒せば全てが終る・・・この島に縛られた亡霊たちも・・・

二振りの魔剣も・・・そして・・・彼女との関係も・・・

彼女ならもう大丈夫だろう。彼女には守る者も、守ってくれる者もいる。

そして彼女を正す事も出来た・・・私の役目はもう終りだ。



「シロウさん、こんな所にいたんですか?」



アティが呼んでいる・・・これが最後の戦いだ。

これが終れば私は座に戻ろう・・・私は亡霊だ、ここにいるべきではない。



「シロウさん、どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

「あ・・・そう言えば」



彼女は少し俯くと、すぐに顔を上げ、私の顔を見つめてくる。



「まだ、貴方の過去とか聞いてませんでしたよね?」

「・・・」



忘れていた・・・そう言えば、そうだ。

今の今まですっかり忘れていた。



「この戦いが終ったら・・・教えてください」

「・・・いいだろう」



この時は結局そう言ってしまったが、話す気はない。

彼女が聞き出すのが先か・・・それとも私が消えるのが先か・・・

運命はどうなるのだろうか?











◆            ◆            ◆












「まだ、貴方の過去とか聞いてませんでしたよね?」

「・・・」



私はそう聞くと、シロウさんはしまったという顔をしていた。

どうやら今まで忘れていたようだった。



「この戦いが終ったら・・・教えてください」



今まで色んなことがあったけど、結局彼の過去は全くと言っていいほど聞けなかった。

ただ・・・夢の中で、彼の過去らしいものが見えた。

大火災で両親を失い・・・義父さえも失い、そして・・・

最愛の人も消えた・・・それでも彼は後悔しなかった。

そして死ぬ間際、彼はまわりに裏切られてもなお後悔しなかった・・・

でも、これを見ても納得は出来なかった・・・彼の口から聞くまでは。

何故彼が私に気にかけていたのかわかった気がする。

彼は、私が自分と同じ道を歩まぬようにしたかったら・・・

だから私の我侭に最後まで付き合ってくれた。

でも・・・これで全てが終る・・・そうすれば彼は私との関係を切るだろう。

そんな事はさせない・・・誰だって幸せになる権利はある・・・もちろんシロウさんだって・・・

だから彼を放さない。そして彼を呆れるぐらいに幸せにしてみせる。



「・・・いいだろう」



彼は長い間をおきながらも、そう返してくれた。

でも、その言葉が偽りであるのはすぐにわかった。

彼は、戦いが終ったらすぐに私の前から去る気だ・・・そんなことはさせない!

何故なら彼のマスターは私・・・彼を幸せにする権利も、私にあるはずなのだから!!






















最後の戦い・・・この島の意志であるディエルゴとの戦い。

遺跡に入ると、多くの亡霊たちが私たちに襲い掛かってきた。

それを切り抜け、最深部へと向かうと、それはいた。

エルゴに反するもの・・・ディエルゴ・・・

そして戦いが始まると、ディエルゴの強力な攻撃は私たちを苦しめた。

シロウさんの矢でも、相手は答えた様子ではなかった。



「せ、先生・・・」

「くっ・・・こんなはずじゃあ・・・」



皆の体力も限界に近い。

シロウさんも、私たちほどではなくとも、体力の消耗が見られた。

こうなったら・・・



「シロウさん、これから強力な召喚獣を召喚します。召喚できるまで、時間稼ぎをお願いできますか?」

「・・・」



私の言葉に、少しの間を空け、そして彼は自信をもってこう答えた。



「ああ。時間を稼ぐのはいいが―――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

『え・・・?』



彼の言葉に誰もが耳を疑った。

もちろん私だってそうだ・・・こんなに痛い目にあっているのに、倒すと言っているのだ。

そして彼はそんな私達の思いを知らずに、詠唱を始めた。



I am the bone of my sword.体は剣で出来ている



その言葉に、私の身体は震え始めた



Steel is my body, and fire is my blood.血潮は鉄で 心は硝子



この詠唱はまさに夢で見たものと同じ



I have created over a thousand blades.幾たびの戦場を越えて不敗



悲しき剣の丘で響き渡る禁句のうた



Unknown to Death.ただの一度も敗走は無く



彼は不器用なほどに強く



Nor known to Life.ただの一度も理解されない



目が眩むほどの悲しみを背負って生きてきた



Have withstood pain to create many weapons.彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う



このうたは彼そのものでもあると気付く



Yet, those hands will never hold anything.故に、生涯に意味は無く



そして、うたう彼を見て



So as I pray, unlimited blade works.この体は、きっと剣で出来ていた



自然と涙が零れた




彼は言い終わると、世界は変わった。

目の前に広がるは剣の墓標が広がる赤い荒野。



「そう言えばアティ、君はこの丘についても知りたがっていたな?」

「へ?」



突然話をふられ、恥ずかしながら間抜けな声を上げてしまった。

しかし、確かにこの丘についても知りたかった・・・



「無限の剣製・・・自分の心を世界に移す禁術、これが私が使える唯一の魔術だ」

「そ、んな・・・」



この世界が・・・この悲しい世界がシロウさんの心そのもの・・・

魔術については以前シロウさんに聞いたことがある。

それでも、こんなことって・・・



「いくぞディエルゴ――――断罪の覚悟は充分か」

『何を?!』



シロウさんはディエルゴに語りかける。

相手も突然のことで驚きを隠せないようだった。

そして、シロウさんの近くに刺さっていた幾つもの剣がディエルゴに襲い掛かった。












完成 8月17日